過敏性腸症候群

 あまり聞き慣れない病気の名前です。腹痛や腹部膨満感などの腹部症状と下痢や便秘または下痢と便秘を繰り返すなどの便通障害を伴う病気です。しかも、細菌性大腸炎などの感染症、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、大腸癌などの悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患や子宮内膜症などの婦人科疾患ではないことが条件となります。
 病気の原因のほとんどが精神的ストレスによると考えられています。しかも、ほとんど全ての方が似たような体験をこれまでにすでになさっています。たとえば、試験勉強が充分にできていないのに学校に行かなければならない、友達とけんかをした翌日などは仮病でなく、本当にお腹が痛くなったり、緊張して下痢をした経験はどなたにでもあるはずです。メカニズムはまったく同じです。
 残念ながら正確な患者数は明らかになっていませんが、旧労働省の平成11年度の統計では、サラリーマンやOLの方々の60%以上が過度のストレスを感じていると報告されています。生活の中で多様で多くのストレスが存在する21世紀においては、患者数は急激に増大しており、日本人の5人に1人はこの疾患、またはその予備軍であると考えられています。
 診断方法は、いきなり大腸の検査をするわけではなく、・・ではない、この病気でもない、と種々の病気の可能性を消していく「除外診断」の形をとります。
 緊張するとすぐにお腹が痛くなったり、下痢をする方は意外に多いものです。腹痛などの腹部症状と便通障害のある方は、一度この病気を疑ってみて下さい。

 
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胃潰瘍・十二指腸潰瘍とピロリ菌感染

 「ヘリコバクター・ビロリ」(ピロリ菌)と言う細菌が胃の中に存在し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎や一部のリンパ腫を引き起こすことが明らかとなりました。さらに、胃ガンの原因菌ではないか?との疑いも深まってきています。この事実が明らかになったのは20年前、1982年のことです。
 胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、胃酸が多く出過ぎることが原因と考えられてきました。この事実は、未だに変わりません。これまでは、ストレス、アルコール、コーヒーなどの胃粘膜に対する攻撃因子と、直接攻撃を守る粘液、豊富な血流、アルカリ性の粘液などの防御因子が通常ではうまくバランスを保っているが、攻撃因子が上回った時に潰瘍を作る、と考えられていました。ところが、最も大きな攻撃因子であるピロリ菌の存在が明らかとなり、「胃潰瘍は感染症である」との新しい考え方を取り入れることが必要となりました。
 統計により異なりますが、日本では胃潰瘍患者の70〜80%、十二指腸潰瘍患者の90%以上がピロリ菌が陽性であると報告されています。潰瘍治療の最大の問題点であった「再発」は、実は原因菌の治療は行わずに、結果としてできた潰瘍の治療だけをしていたからと考えられます。しかし、潰瘍のない、自覚症状のない40歳以上の日本人の70%以上がピロリ菌に感染していると報告されていますから、ピロリ菌の感染のみが原因とは考えられません。実際に潰瘍を作ってしまうのは、感染者の2〜3%程度です。
 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の診断は、今まで通り胃透視(上部消化管X線検査)または胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)で行います。ピロリ菌の感染診断には5種類の方法があります。
 1)内視鏡検査時:胃粘膜の培養、組織診断、ウレアーゼテスト
         (ウレアーゼテスト:ピロリ菌の酵素活性の検査)
 2)内視鏡を用いない方法:抗体検査、尿素呼気試験
 胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療は、ピロリ菌感染の有無により大きく異なります。ピロリ菌陽性の場合はこれまでとは異なり、「除菌治療」といってピロリ菌を殺す抗菌剤を含んだ潰瘍治療が必要となります。強力な潰瘍治療薬と2種類の抗菌剤を1日2回に分けて1週間服用します。この組み合わせによる治療により、80〜90%の患者さんが除菌に成功しています。その後は、通常の潰瘍治療を行います。但し、除菌療法は胃透視または胃カメラ検査で活動性の潰瘍が証明された場合のみが、健康保険診療の対象となります。
 潰瘍治療の基本は、胃潰瘍は8週間、十二指腸潰瘍は6週間潰瘍治療薬を服用することです。したがって、治癒判定の検査はこの時期を目安に行います。同時に、ピロリ菌の除菌が成功したかどうかの検査も受けてください。除菌治療の判定は、抗菌剤を含んだ除菌治療終了後4週間以降、プロトンポンプ阻害薬という強い潰瘍治療薬やピロリ菌に効果のある胃粘膜保護剤の服用を4週間以上中止した後に行うことが決められていますから、治療方法により異なります。検査の時期については、主治医の先生と相談をして決めてください。
 潰瘍治療の予後は、除菌に成功するかどうかで大きく異なります。除菌成功例では潰瘍の再発はほとんど見られませんが、不成功例または除菌治療を行わなかった場合は3年以内に半数以上の患者さんが再発しています。

 
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尿素呼気試験

 「尿素呼気試験」、聞き慣れない、難しそうな検査の名前です。内視鏡検査を必要としないヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染診断検査方法のことです。尿素呼気試験には、内視鏡検査にはない以下のような利点があります。

            尿素呼気試験の利点
 1)内視鏡検査を受けなくて良いので、全く苦痛がありません。
 2)試験薬は自然界にも微量に存在するので安全です。
 3)検査時間は20分、測定時間は5.5分と短時間で終了しますから、測定装置があれば30分で検査結果を知ることが出来ます。
 4)胃粘膜全体を検査するので、診断が正確です。
 5)したがって、除菌療法の治癒判定には最も優れています。

            尿素呼気試験の原理
 ピロリ菌は胃の中の尿素を取り込んでアンモニアを作り(ウレアーゼ活性と言います)、ピロリ菌の回りをアンモニアの層で守り、胃酸を中和して胃の中で生息しています。尿素呼気試験は、ピロリ菌がアンモニアを産生することを利用した試験方法です。
 尿素には炭素(C)が含まれますが、自然界の98.9%は12Cの形で存在しています。試験薬の尿素は放射活性を持たない安定同位元素である13C(自然界には1.1%)が含まれ、ピロリ菌が存在する場合は、この尿素を取り込み、アンモニアと13CO2に分解します。発生した13CO2は吸収されて、肺から呼気として排出されます。呼気の中の13Cを検出するのが、尿素呼気試験の原理です。感染していなければ、試験薬はそのまま胃の中を通過して尿として排出されますから、呼気の中に13Cは含まれません。

            実際の検査方法
 1)先ず、試験薬を服用する前に、呼気バッグに息を吹き込みます。
 2)100mlの水に溶かした試験薬を服用します。
 3)左側を下にして、5分間ベット上で安静にします。
 4)15分間座位にて安静にします。
 5)合計20分後、再び呼気バッグに息を吹き込みます。

            注意点
 1)胃粘膜の検査ですから、空腹時に検査を受けてください。
 2)この検査は、活動性の胃潰瘍や十二指腸潰瘍が胃カメラ検査または胃透視にて証明された場合、及びその除菌治療後の治癒判定の場合のみが健康保険診療の対象となります。
 3)繰り返す胃・十二指腸潰瘍で困っている方、慢性胃炎の種々の症状でお困りの方、胃ガン家系の方などでご心配の方は、かかりつけの先生または当クリニックまでご相談ください。

 
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